2016年2月8日月曜日

反動の週末③(第1日曜日)

エトルタとルーアン日帰りドライブは土曜日。もう一つの週末、日曜日は第1日曜日ということで、月に一度の美術館無料デーを利用して、タダであればちょっと覗いてみようかなと(失礼・・)思っていた美術館を梯子してみました。


まずはオルセー美術館の館長が一番好きな絵はギュスターヴモローだと語っているのをどこかの雑誌で読んで、ちょっと興味を持ったギュスターヴモロー美術館。モンマルトルの丘のふもとにあり、ちょうどこれもいつか行こうと思っていたパリのバゲットコンクール2015年グランプリに輝いたパン屋の近くでもあるので、またどちらが主目的かわからない「ついで」巡りで。

ちなみにバゲットは納得の美味しさでした。もっちり感とか塩気とかバターの香ばしさとかに特に何か目立ったというかとがったところはないのだけれど、しっかり基本に忠実に美味しい素材を素直に引き出していますという感じで、フランスでは結局こういう仕事をする人が評価されるのだなと、いい意味で少し驚いたというか新鮮に感じた。美味しいものを作って正当に評価されて、スタッフもお客もみんなが笑顔で背筋がピンとしていて、こういうのはまさに相乗効果というか、ミシュランの星獲得にかけるレストラン業界のシビアな話もよく聞くけれど、やっぱり非常に意義が高いと思う(月並みな表現ですが)。



さて、ギュスターヴモロー美術館は、モローが実際に暮らしていた家をまったく掃除せずにそのまま展示しているという印象・・階段のでこぼことか、家具についているほこりとか、照明の暗さとか、もう少し何とか整理したらいいんじゃないかと余計なお世話で思ってしまうけれど、逆にこの時が止まったようなリアル感をありがたいと思うべきなのか。絵も私の趣味では決してなく、スピリチュアル系というかサイケデリック系というか、もう少しグロさを薄めたら日本人が大好きなクリムトとかに近い世界かもしれないけれど、どちらかというと曼荼羅だよなあと、オリエンタリズム(インドの象とかガンダーラ美術のモチーフが随所に使われている)の影響もフランス人がはまるとこういうことになるのね、と漫画オタクの多い現代フランスの原点を見たような気持ち。

まるでファンタジー小説の表紙のような作品(他のはもっとおどろおどろしいのが沢山)

どちらかというと、初めて知ったのだけれど、モローが印象派の先駆けとして、マティスやルオーらの師として国立美術学校で長年教鞭をとっていたということで、特にルオーとはかなり緊密な師弟関係で互いに影響を与えあったとの解説つきでルオーの作品とともに特設で並べて展示されていたので、ルオーの方が好きだなと思いつつ、その師匠の絵という視点で見ると感心させられる、という感じでした。こんなにマニアックな絵を描く人なのに、権威ある国立美術学校で何人もの有能な若い画家を育て、そして彼らから非常に慕われていたというのが意外。ピカソの絵は好きだけれど人間性は酷評されているのと対照的だなあ、って、実際の人物に会ったわけではないから何とも言えませんが。

右上がモローで左下がルオー
売店にはモローにまつわるカタログや本が並べられており、その中には日本語の本もいくつか置いてあった。やはりフランス文化への造詣という意味では、日本人は世界でも抜きんでているというか、層が非常に厚いのだろうな。フランス文化に限らず、あらゆる分野で突き詰めて勉強しようと思えば文献にしろ情報がいくらでもそろっている環境がある日本は本当に恵まれているのだと、外へ出てなお一層気づかされる。


次に向かったのは、結局タダではなかったのだけど、ジャックマール・アンドレ美術館。タダじゃないならまた今度にしようかなと思いつつ、入り口で見たポスターに「ノルマンディーの印象派展」と貼ってあるのを見て、昨日の今日でタイムリーすぎる!とこれはせっかくだから見ていこうと入ったのですが、実はこの特別展示、3月から始まるという予告だった・・というオチ。まあでも、入場チケットにイヤホンガイド代(日本語あり)も含まれていて十分勉強させてもらえたので、文句を言う筋合いはないのですが。

ジャックマール・アンドレ夫妻はかなりの資産家で美術コレクターとして自分たちのお屋敷を集めた美術品で豪勢に飾り立て、それが後世にそのまま美術館として残っているのだから、なんて幸せな人生だろうか。また、夫妻は旅行が好きで毎年必ずイタリアに行き、家具もベネチアから取り寄せたものだったり、部屋中集めたイタリア美術で埋め尽くすほど(これが無秩序というか独特のセンスで好き放題に飾りまくっていて、圧倒される)だったり、エジプトやアジアなどにも足を伸ばしてすっかり魅了されて工芸品を集めていたり、その時代の旅行は今より不便なこともたくさんあるのだろうけど、どんなにか豪勢でロマンチックだったのだろうかと思いをはせてしまう。パリには今もジャックマール・アンドレ夫妻のような人たちがわんさか住んでいそうだけれど。

イタリア美術を展示した間


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